「シャネル」がサポートする若手支援のアワード「イエール賞」

若手デザイナーやクリエイターの登竜門として知られる「イエール国際モードフェスティバル(Le Festival International de Mode, d’Accessoires et de Photographie a Hyeres)」が、南仏のリゾート地イエールで4月25~29日に開催された。

同フェスティバルは地域活性化を目的に1985年にスタートし、今年で34年目を迎えた。「シャネル(CHANEL)」が長年メインでサポートし、過去にはカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が審査委員長を務めたこともある。今年のオープニングイベントでは彼の死去をしのび、映像作家ロイック・プリジャン(Loic Prigent)が手掛けた、ラガーフェルドがイエールを訪れた際のショートフィルムとともに開幕した。

メイン会場は、イエール市街を見下す丘の上に建つ中世の歴史的建造物ヴィラ・ノアイユ(VILLA NOAILLES)だ。会場内ではファッション、フォトグラフィー、アクセサリーそれぞれの部門のファイナリストの作品と、過去の受賞者の作品の展覧会やポップアップが開かれている。一般客も自由に観覧することができ、展覧会自体は5月26日まで開催される予定となっている。ほかにも会期中には業界関係者向けのトークショーやコンサート、雑誌「セルフ サービス(Self Service)」創刊25周年を祝した展覧会が開かれた。

今年のファッション部門には、全世界から約300のエントリーがあった。ファイナリストには日本や台湾、フィンランド(2組)、オーストリア、フランス、ラトビア、スイス、アイルランド、ロシア出身者の10組が残った。メイン会場から約5km離れた、かつて倉庫として使われていた建物で、ファッション部門のファイナリストと昨年のグランプリ受賞者「ボッター(BOTTER)」のショーが開催された。今年はファイナリストのほとんどが20代で、在学中もしくは卒業したばかりと、職業経験のない若手デザイナーが多い印象だった。そして最終日に、審査委員長を務めるナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)=「クロエ(CHLOE)」クリエイティブ・ディレクターからグランプリ受賞者が発表された。今年はレヴィを含む11人の審査員の意見が日本とオーストリアの真っ二つに分かれたそうが、グランプリはオーストリア出身のクリストフ・ランフ(Christoph Rumpf)が受賞した。

ランフはオーストリア第二の都市グラーツ出身で、現在はウイーン美術大学(University of Applied Arts Vienna)に通う25歳。“San Titres(無題)”と名付けられた7ルックのコレクションは、彼の空想に基づいている。「ジャングルに生まれた一人の少年が実は王子であることを家族に告げられ、やがてジャングルから抜け出して王族のルーツを取り戻そうとするストーリーだ」と説明する。ウイーンのフリーマーケットで手に入れたペルシャ絨毯やカーテンなどの古布を使い、誇張された柔らかいジャケットや、ギリシャ神話に登場する女神のようなワンショルダーのドレス、梱包材で作られた構築的なシルエットのコートで空想の物語が描かれている。ランフはジョン・ガリアーノ(John Galliano)やクレイグ・グリーン(Craig Green)の作品に影響を受けてファッションの道を選んだという。残り1年を大学で学びながら、ウイーンにアトリエを構えてデザイナーとして活動する予定だと今後について語った。

グランプリには副賞として、生地の国際見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)」から賞金2万ユーロ(約250万円)と見本市での作品展示の機会が、「シャネル」から同額相当のメティエダールの技術提供が、「プチバトー(PETIT BATEAU)」から製品作りのコラボレーションとロイヤリティーおよび1万ユーロ(約125万円)が贈られた。

そして審査員特別賞を受賞したのは日本の3人組による「リコール(RE:QUAL≡)」だった。3人は東京モード学園在学中に出会い、卒業後に海外のメゾンブランドで経験を積んだモデリストの穴澤洋太、国内ブランドでモデリストを務めていた戸田麻奈実、そして文化ファッション大学院大学とここのがっこうでも学んだデザイナーの土居哲也で、2016年にブランドを始動した。

昨年も同フェスティバルのセミファイナリストに選出されており、今年はグランプリこそ逃したものの審査員からは高い評価を得た。ショーでは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー(Back To The Future)」のBGMに、「アルマーニ(ARMANI)」風のエレガントなスーツや「ラルフ ローレン(RALPH LAURENT)」風のプレッピースタイルなど、王道のクラシックスタイルの解体や再構築を繰り返し、アイロニカルで機知に富んだコレクションを披露した。土居デザイナーは「次の時代の街を彩る服を作りたい」とブランドのビジョンについて語った。

過去の受賞者には「サンローラン(SANIT LAURENT)」クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)、「ハナエモリ(HANAE MORI)」の松重健太デザイナーなどがおり、昨年の「ボッター」は受賞からわずか4カ月後に「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のアーティスティック・ディレクターに任命されるなど、若手の登竜門として業界から注目されるコンペティションであるだけに、本年度の受賞者の今後の活躍にも期待したい。

新春を祝う2019年干支モチーフアイテム4選

2019年の幕開けにあたり、新たな気持ちでスタートする人も多いだろう。そこで18年の干支である「戌」をモチーフにしたアイテムを「トッズ」「ヴェルサーチ」「トム ブラウン」「モンクレール Tシャツ コピー」から紹介する。新年の装いに取り入れて、おめでたい気分を盛り上げたい。

「トッズ」は、インソールに犬の足あとをプリントしたスリッポンスニーカーを発売する。ウィメンズは赤いステッチをアクセントにした白のソフトレザーに、「トッズ」のアイコニックなダブルTのメタルバックルを飾った。足元から新年にふさわしい装いを。価格は8万8000円。

“オードリーカプセルコレクション”からデザイナー、ドナテラ・ヴェルサーチ(Donatella Versace)の愛犬で知られるジャックラッセルのオードリーをグラフィカルに落とし込んだ。きらびやかなスワロフスキークリスタルとスタッズをたっぷりちりばめたTシャツが登場。ゴールドで彩った「ヴェルサーチ」の象徴的なマークがオードリーを囲む。価格は7万5000円。

トム・ブラウンは愛犬ヘクターをモチーフにした遊び心のあるデザインのバッグを作った。上質なカーフレザーを使用し、ブランドのシグニチャーであるトリコロールのグログランテープをポイントにした。ハンドルに付いたタグにはゴールドのブランドネームが印字されている。価格は27万9000円。

「モンクレール」はドッグウエア・ブランド「ポルド ドッグ クチュール(POLDO DOG COUTURE )」とコラボした商品を販売中。ブランドの代表的なナイロンラケを使用した犬用ダウンジャケットをラインアップ。動きやすいデザインで、愛犬の防寒対策もしっかりと。価格は6万1000円。

イヴ・サンローラン美術館「New Display for the Collections」展に見るアートとファッションの対話の始まり

パリのイヴ・サンローラン美術館(Musee Yves Saint Laurent)で、回顧展「New Display for the Collections」が2月12日から開催中だ(12月31日まで)。膨大なアーカイブの中から今回は、「イヴ・サンローラン」の歴史の中で最も有名な作品の一つ、1965-66年秋冬コレクションのピエト・モンドリアン(Piet Mondrian)と、彫刻家クロード・ラランヌ(Claude Lalanne)との共同制作作品など約50点を展示し、“ファッションとアートの対話”の始まりを示す。

65年8月6日のショーで披露されたモンドリアンのドレスに対し、当時米WWDは「革新的」と表現した。オランダ出身の画家モンドリアンの作品から着想を得た絵画のようなボックスシルエットのドレスは、フランス的な粋やシックを表現しつつ、現代的で全く新しいスタイルだと一世を風靡した。仏雑誌「マリ・クレール(Marie Claire)」は「まばゆいばかりの若々しいスタイル」、米紙「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」は「最高のコレクション」、米雑誌「ハーパーズ バザー(Harper’s BAZZAR)」は「未来の洋服」と表現したという。キャンバスからドレスへ、2Dから3Dへと形を変え、絵画が生き生きとした洋服としてムッシュ・サンローランによって息吹を与えられたのである。モンドリアン自身は、31年に「ファッションは時代を正確に反映しているだけでなく、人類社会における直接的な視覚表現の形態の一つでもある」という言葉を残しており、自身の作品がきっかけで後に起こるファッションとアートの融合を予期していたのかもしれない。

同コレクションの中で同時に打ち出されたのが、ロシア出身の画家セルジュ・ポリアコフ(Serge Poliakoff)の作品にインスパイアされたポリアコフドレスだ。モンドリアンもポリアコフも、ウールで手編みされておりシームレスで、シンプルなカットと幾何学的な線に焦点を当て、洗練された芸術美がドレスで表現されている。当時ムッシュ・サンローランは「モンドリアンとポリアコフのキャンバスに動きを与えてドレスへと変容させること、それは“純潔”と“均等”を私に教え、活気を与えてくれた」と語っていたという。同コレクションで登場した、ロシアの民芸品であるマトリョーシカ人形に触発されたドレスも展示されている。

モンドリアンやポリアコフ以外にも、多くの芸術家に敬意を払っていたムッシュ・サンローランが唯一コラボレーションを果たしたのは、彫刻家クロード・ラランヌだった。出会いはまだムッシュ・サンローランが「クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)」に在籍した50年代後半で、同じく彫刻家の夫フランソワ・ザビエル・ラランヌ(Francois-Xavier Lalanne)とともに制作していた動物や植物を特徴とする彼らの彫刻に、ムッシュ・サンローランとピエール・ベルジェ(Pierre Berge)は大変引かれたという。当時まだ無名だった夫妻だがムッシュ・サンローランと長きに渡り友人関係を築き、彼らは最初に69-70年秋冬コレクションでガウンを共同制作し、その後は多くのジュエリーを生み出した。

体の一部を銅製の彫刻で装飾されたガウンは、展示されていると完全な彫刻のようにも見える。シンプルに布を巻いてドレープを作っただけのようなガウンだが、ランウエイで動きが加わると、軽やかに揺れる布と動きのない彫刻、布の温かみと銅の冷たさなど、相反する要素が組み合わさり芸術美を引き出したのではないかと想像する。その後80年代まで続いたコラボレーションでは、イソギンチャクとミカンを装飾した銅製のネックレス、デイジーと蝶の形をしたチョーカー、アジサイの花と葉で飾った銅製のヘッドピース、キャベツの葉の形をしたヘッドピースなどユニークな作品が「イヴ・サンローラン」のオートクチュールコレクションを完成させるキーアイテムとなっていった。会場にはジュエリーとドレスのほか、ショーの写真もいくつか展示されていた。

と名付けられた2階は、ムッシュ・サンローランが生み出した象徴的な作品が展示されている。それは、特定のテーマに基づいて一連の作品を作成する画家や彫刻家のように、彼はクチュリエとして主要な服のデザインを継続的に再解釈し、あるジャンルを更新し続けたのだという事が分かる。例えば、66年に発表された最初の正式なタキシードに続いて、タキシードスカート(83-84年秋冬)、タキシードドレス(92-93年秋冬)、およびタキシードボレロ(2000-01年秋冬)が続く。美術館の中で最も広い部屋には、イタリアのルネサンス絵画、17~20世紀の貴族や廷臣らが着用したドレス、映画の衣装などから着想を得た作品が展示されている。それらはムッシュ・サンローランがキャリアを通して服飾史を探求した姿勢と、現代では多くのデザイナーが試みるファッションとアートの融合というアプローチ方法の始まりを示しているようだった。

「シャネル」のフレグランスイベントをジャン=ポール・グードとともに体験! ダンスオーディションも開催

シャネル(CHANEL)」は4月7日まで、東京・新宿のルミネ0で人気フレグランスシリーズ「チャンス」のイベントを開催中です。会場には長年「シャネル」の広告を担当し、「チャンス」の新作キャンペーンも手掛けた仏アーティストのジャン=ポール・グード(Jean-Paul Goude)の作品を集めた展覧スペースと、彼のキャリアと人生を辿るシアタースペースが登場します。そしてなんと、ダンスオーディションをテーマにした新作CMにちなみ、実際にダンスオーディションを開催!審査員はジャン=ポール本人と、CMのダンスを振り付けたライアン・ヘフィントン(Ryan Heffington)が務めるという、本格的なオーディションです。イベント開催前日には、ジャン=ポールが来日し、アンバサダーでバレエダンサーの飯島望未さんとプレスに対して自らイベントを案内をしてくれました。世には出ていない貴重な作品やスケッチなども満載なイベントをリポートします!

まず会場に入って最初にあるのはシアタールームです。ゆったりしたソファで映像が見られる贅沢なスペースになっています。ここではジャン=ポールの生い立ちや彼が今まで手掛けてきた作品などをまとめたドキュメンタリーを放映しています。1時間以上ある映像で、ダンサーでもある彼が心を打たれたロシアのバレエから、マライア・キャリー(Mariah Carey)との仕事まで、幅広く彼のキャリアや考え方について知ることができます。ジャン=ポールファンは必見ですね!

シアターを出ると、ジャン=ポールの広告作品を展示するスペースに進みます。まず展示しているのは、ジャン=ポールが「シャネル」のために初めて手掛けた作品です。メンズフレグランス「エゴイスト」シリーズのために、女性が男性のエゴイズムに嘆く姿や、一方で男性が自身のエゴイズムと戦う姿を表現しています。続いてブラジルで撮影した広告キャンペーンは、当時CGなどがなかったために全てリアルで演出をしたものだそう。奥に進むと、まだ16歳のヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)を撮影した作品が現れます。ジャン=ポールは「苗字のパラディとパラダイスを掛けて、彼女を天国の鳥と表現しています。そんな天国の鳥を、鳥かごに入れてしまいました(笑)!」と話していました。そのほかアイコニックな「ナンバー5」の香りを表現したアートも登場します。鮮やかなカラーを使ったこれらの作品の中には、実際に世に出ていないピースもあるそうです!最後に、今回のイベントの主役である「チャンス」の広告キャンペーンを展示しています。

展示スペースには、スケッチやイラストレーションのほか、デジタルなインスタレーションも登場します。暗く仕切られたスペースには、鏡に写した「ナンバー5」の中に閉じ込められ、小鳥になったココ・シャネル(Coco Chanel)の動くインスタレーションが登場!小鳥になってボトルの中に飛ぶ姿、とても可愛らしいです!こちらのインスタレーションの仕組みを解説したスケッチも公開しているので、ぜひ見てみてください。会場の中央には「シャネル」以外の仕事を音楽のリズムに合わせて画面が切り替わるスクリーンも登場します。

展示スペースを抜けると、ポップアップストアと、オーディションルームが。CMと同じ、椅子を使ったダンスをイメージし、部屋には椅子が並べられています。ここで応募者はジャン=ポールとライアンの前でダンスを披露することになります。4月1〜6日に予選、最終日の7日に決勝戦が行われ、合格者4人はパリに招待されます!さらに、パリでは、バレエダンサーのオーレリー・デュポン(Aurelie Dupont)のレッスンを受けられるという、超豪華なコンテンツをプレセントするそうです。なお、ウェブでの予約枠はすでに定員になったのですが、当日飛び入り参加もできる(!?)かもしれないそうなので、予約していない人もまだ遅くないかもしれません!ちなみにオーディションの部屋はガラス張りになっているので、その様子を外から見られるようになっています。

ポップアップショップでは、既存の「チャンス」の香水とヘアミストのほか、6月に発売する「チャンス オー タンドゥル パルファム」のコフレを先行販売中です。「チャンス オー タンドゥル パルファム」は4つの香りがある「チャンス」シリーズの中で一番人気のピンクの「チャンス オー タンドゥル 」の新作になります。既存の「オードゥ トワレット」のグレープフルーツやジャスミンをブレンドしたフェミニンでフルーティーな香りですが、新作はローズをブレンドし、より大人の女性も楽しめるものになっています。こちらは4代目調香師のオリヴィエ・ポルジュ(Olivier Polge)が手掛けました。ちなみに豆知識ですが、「シャネル」の「チャンス」は幸運のシンボルとしてさまざまな意味が込められています。例えば丸いフォルムは、「運命の輪」をイメージして作られていたり、四角いキャップは、サイコロをイメージしたり。また、「CHANCE」と「CHANEL」は2文字しか違わないことも、何か運命を感じますよね……!

なんとも盛りだくさんなイベントリポートでしたが、7日まで無料で誰でも入れるので、ジャン=ポールファンはもちろん、ダンスオーディションを見たい人や、新生活に向けて新しい香りを探している人はいかがでしょうか?